短編小説「3年、30年」(3)
ハクソン:知らないんですか。さっき集合したとき、いたじゃないですか。同じクラスで勉強する除隊軍人の姉さん。僕たちの初級団体書記になるらしいんですけど
チョルミョン:笑わせるな。
まだ会ってもいないのにそんなによく知っているかい。
ハクソン:あの姉さん、僕と同じ人民班に住んでるから。
チョルミョン:それはなによりだ。これからは町で会っても姉さんなんて呼べないな、初級団体書記だと呼ばないと、ははは・・・
チュンミン、ハクソン:ははは
チュンミン:もうそろそろ帰りましょう、なんだか、やっちゃいけないことをしたときのようで、ちょっとうしろめたい気がするな。
真っ盛りのピョンヤンの春景色を以前とは違う心で感受しながら、僕たちは長い間、街をのし歩いた。お互い経歴を話し合ったり、これから3年間を協力し合って、出来る限り、楽しくやっていこうという筋の通らぬ約束もした。
ハクソン:でも、なんで大学はここに移るんだろう、もとの場所にあったら、家から近くて便利なのに。
チョルミョン:ちえっ、こいつ、まだ子供だな、ここはマンギョンデと近いところだろ?。革命学院やハイクラスの軍事大学は全部、ここにあるじゃないか。
チュンミン:そういえば、僕だってそこまでは気がつかなかったな。
ハクソン:なるほど、そうでしたね。
チョルミョン:俺はわくわくするよ。
どうのこうのと言っても、人民軍の工兵出身の俺には桧舞台さ、他のは知らなくても建設では俺が博士も同じだ。
チュンミン:それもそうだな。女子大生が大半のこの大学じゃ、働き手が足りないに決まっている。その腕前じゃ、大学では重宝がられるに違いないよ。
入学当時の僕たちはこうだった。
口に出してこそ言わなかったものの、僕たち3人の考えは似たり寄ったりだった。
チョルミョン:教員大学で勉強するのはそれほど難しくないはずだ。
ハクソン:僕もそう思ってますけど。
しかし、僕たちのこの考え方は甘く、いざ、勉強が始まると大学の一部の科目は、これぐらいの実力なら大丈夫と自負していた僕も困惑するほどだった。
もちろん、ハン・チョルミョンは言うに及ばず。
僕たちはすぐ気づいた。やはり大学の勉強は生易しいものではないということを。実際、ある娘の存在がそれをもっと難しくしたかも知れない。
その娘とは初対面の印象すら薄かった普通の娘、ソルミだった。