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短編小説「百日の写真」(14)
 チュチェ113(2024)年 出版

 「敬愛する金正恩総書記!」
 傍にいた管理係の娘たちが歓声を上げながら、もはや、先に立って走っていた。
 金正恩総書記が事績館の前庭に出た。ただ今、見えたばかりなのに、今が初対面のように、ソンオクの目からどっと涙があふれ出た。
 解説係と従業員は万歳を叫び、総書記に抱きついた。けれども、ソンオクはその場に立ち尽くしていた。眠りについたばかりのチュンソンが万歳の声に再び目を覚ましたのだった。
 「ソンオクさん、何をしているの、金正恩総書記が記念写真を撮ろうと呼んでいますよ」
 いつの間にか傍に来たミョンスン館長が彼女を引っ張りながら言った。
 感激と喜びの涙、沸き立つ歓呼に取り囲まれた総書記がソンオクにおいでと手招きしていた。
 「ソンオクさん、早く来て私の傍に立ちなさい」
 ソンオクはこみ上げてくるものを飲み込み、総書記のところに行った。
 総書記は、腰をかがめてチュンソンのふくよかな頬を優しく叩き、「お子さんの名前はなんですか」と聞いた。
 「リ・チュンソンです」
 ソンオクが答えた。
 「チュンソン、男の子ですね。私もチャンソンの未来であるチュンソンと写真を撮る幸運に恵まれてみましょう。ちょっと抱いてみていいですか」
 総書記はチュンソンを布団ごと抱き上げた。そして、揺りかごを揺らすように、よしよしとあやした。一瞬、チュンソンは赤い唇をもぐもぐさせていたが、キャッキャッと声を出して笑った。
 「御覧なさい。笑っています。チャンソンの未来が大きく笑っています」
 「ひゃあ」
 感嘆の声と共に拍手が起こった。
 「チャンソンの明日はほかならぬこの子たちのものです。これからチュンソンが暮らすことになるチャンソンの明日はどんなに美しいでしょう。歌にもあるように、チャンソンは行く行くも昨年とまた違うところ、人民の幸せの笑い溢れる楽土になるべきです」
 金正恩総書記は子を受け取ったソンオクを身近に立たせた。
 ソンオクは幸福のあまり、無我夢中になって、自分でも笑っているのか泣いているのかわからずにいた。瞬間、カメラマンがシャッターを切った。