/ コンテンツ - 本
短編小説「百日の写真」(7)
 チュチェ113(2024)年 出版



 家から写真館まではさほど遠くなかった。丘の上にぽつんと立っている一軒家のソンオクの家から小道に沿って少し降りて行くとチャンソン革命事績館がある。そこがソンオクの職場だ。事績館の前を通り過ぎて郡所在地の街の方へ進むと十字路に出る。その十字路の真ん中に写真館があるのだ。事績館の前からは大通りが延びている。道端には短めの野生の果樹が育ち、奥のほうに朝鮮五葉松や松の木が密集している丘伝いの小道はソンオクの出勤の道でもあった。朝露に靴がしっとり濡れるのも知らず、ソンオクは楽しい気持ちで小道を下りていった。赤ちゃんにも母の気持ちが伝わったのか、チュンソンは起きていて体をもぞもぞさせていた。ソンオクは息子の尻を軽く叩きながら、囁いた。
 「チュンソン、母と一緒に写真館に行って、百日の写真を立派に撮りましょうね。そうしてお父さんに送るの。おばあさんがどうしてそんなにせかすのか、あんたにはわからないでしょうね」
 百日にしかならない赤ちゃんに彼女の話が通じるわけではないが、ソンオクはやさしく話しかけた。
 「それはね。お母さんが百日に写真を撮れなかったからだよ」
 自分の百日のことであるだけにソンオクに当時のことがわかるはずがない。でも、父と母から何度も聞かされた話だったので、彼女にはその日の状況が自分が体験したことのように浮かぶのだった。
 「あなた、なんで一人で帰ってきたんですか」
 「カメラマンがなあ、ヨンジャン里に結婚式があって、呼ばれて行ったそうだ」
 「まあ、どうしよう。この郡にはカメラマンがその人しかいないのに」
 「しようがないじゃないか。ヨンジャン里ってすぐそこのところでもないんだし」
 「あなた、よくもそんな呑気なことおっしゃられますね。早く自転車に乗って迎えに行って頂戴」
 「ヨンジャン里は郡所在地から8里も離れているんじゃろ。多分、お昼過ぎにそこに着くだろうな」