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短編小説「百日の写真」(6)
 チュチェ113(2024)年 出版

 チャ・ヨンスクは急に騒ぎ立てた。
 「ソンオク、百日の今日、一番の大事はなにがなんでも、立派な写真を残すことだよ。ペクトゥ山からこんな素晴らしい記念品が届いたんでしょう、だから、それ相応の素敵な写真を送らなくちゃね。そうでしょう。ポムミのお父さん」
 「そうだとも。この家ではな、白い粉餅やぼた餅なんか作るより、写真を撮るのが先のことだろうな」
 「そう言われますともっと気が焦りますね」
 「ソンオク、あんたは早く写真館に行って、カメラマンに頼んできなさい。
 チュンソンの百日の写真は、アマチュアじゃなく、必ずチャンソン写真館のカメラマンが来て撮らないと駄目だとね」
 「まあ、そうだわ。ひょっとして、今日、カメラマンが他の家にめでたいことがあって、呼ばれて行ったりでもしたら大変ですものね」
 蒸気が立つこしきや初の来客であるチョンス爺さんのことは後に回して、ソンオクは急いで着替えると、庭に下りた。
 母がソンオクを呼び止めた。
 「いっそのこと、チュンソンをおぶっていったら」
 「どうせ行くなら、そこの写真館でも何枚か撮って来なさい。もちろん、後で家でも撮るでしょうけど、備えあれば憂いなしというじゃないか。立派なスタジオもある写真館で何枚か撮って置けば一安心するでしょうね」
 ソンオクもなるほどと思われて部屋に戻ってチュンソンを負ぶった。急いで大門を出ようとしたところ、ソンオクは人民班の班長とばったり出会った。班長は卵を山盛りに盛った手桶を持って庭に入ろうとしたところだったが、ソンオクの出で立ちにわははと高笑いした。
 「まあ、ソンオクさん、チュンソンの百日おめでとう。ところで、そんな格好でどこへお出かけ?」
 「は?」
 ソンオクは自分の履物を見て一緒に笑い出した。片方の足にはリボンがついた自分の靴を履き、もう一方の足には先の丸い母の靴を履いていたのだった。
 自分が慌てふためいているわけを説明しながら班長と笑っているうちに、ソンオクは落ち着きを取り戻した。一瞬、こんなに慌てなくてもいいじゃないのかとも思われたが、またもや母の催促を受けた。 
 「さっさと行かずになぜ庭でもたもたしてるの」
 ソンオクが答える前に人民班の班長が大きい声で答えた。
 「心配しなくていいんです。まだカメラマンは出勤していないはずだし、こんなに早くから急がなくていいんでしょう」
 「こんなにのんびりしていてまたあんたの百日のようになるんじゃないの。いらいらするね」
 「お母さんの気持ちは十分分かっているわ。お母さん、心配しないで、ポムミのお父さんと班長さんのおもてなし頼みますわ。それじゃ、行って来ます」
 ソンオクはチュンソンを負ぶって外に出た。