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短編小説「明るい光」(9)
 チュチェ107(2018)年作

 この時、ハン・ジュボンが息をはずませながら走って来て金正恩総書記に挨拶した。
 その前に近づいた総書記が喜んで言った。
 「その年に建設現場に出るのはどうも無理でしょう」
 ハン・ジュボンは優しく話しかける総書記にわけを説明した。
 「リュギョン眼科総合病院が建てられるという嬉しい便りに接して、前々から出てみようと思っていましたが、その間、病院に付きっ切りで、ついぞ、出られなかったのです。
 この頃は少し、自由な時間もあって、新しく建てられるリュギョン眼科総合病院に私の素朴な心でも捧げたいので・・・」
 ハン・ジュボンは恐縮して身の縮む思いをした。
 総書記は「今日、先生と話し合いたいことがあって、呼んだのですが」と言った。
 (水晶の削り屑みたいな私にこれほど強い関心を持つとは・・・)
 ハン・ジュボンは感激のあまり、肩を振るわせながら涙ぐんだ。
 「先生、心を静めてください」
 ハン・ジュボンの顔に陰りがさしていることを見抜いた総書記は、他人には言えない悩み事でもだえていると知って、優しく言った。
 「今日、私に何か言いたいことがありましたら率直に言ってください」
 少しの隔てもない総書記の言葉に目頭が熱くなったハン・ジュボンは、もじもじしてからやっと口を開いた。
 「私は夢にも総書記に会いたかったのです」
 「ありがとうございます。ところが病院にいるはずの先生が、なぜ、このように建設現場に出ましたか」
 「先日、私は病院を辞めました。もう年だから仕方がないけど、一生、病院で眼科機器を扱ったもので、いざ、手を放そうと思うと苦しいかぎりで。そこでここリュギョン眼科総合病院の建設現場に出れば、少しは辛いことを忘れるようで、でも、たいして役に立つこともなく、だからといって若者たちに負担になることもないようで、こうしてしばしば出ています」
 ハン・ジュボンは心の中の悩みをそのまま打ち明けた。
 その話を聞いていた総書記は言った。
 「先生の健康を案じてそうしたのでしょう。まだ話したいことがあるようですが、ごゆっくり、どうぞ」
 ハン・ジュボンは落ち着きを取り戻して、胸にこびりついていた数奇な運命について詳しく話し始めた。
 「私は国が解放される5日前に生まれました・・・」
 それは実に涙ぐましい話だった。